嵐山・高雄パークウェイを経て、タクシーは私を、神護寺の石段へと続く道の目前に降ろしてくれました。
 ガイドブックには、神護寺の石段が大変だと書いてありました。タクシーの運転手さんも「きついですよ」と言いました。

 それで、運動不足の私はちょっと不安に思いながら、デコボコとした石段を、一段一段踏みしめるようにして上り始めます。

 途中にあるお休みどころ...

 赤い番傘と赤い毛氈が、木立の色になんてピッタリ合うのでしょう。

 少し上っては立ち止まり、あちこちの景色にデジカメを向けて、「ジー、カシャ!」「ジー、カシャ!」とシャッターを切ります。

 それから、あちこちで、思い切り深呼吸もします...
自然の色合いの中で、自分でも呆れるくらいひたすら感動してしまいました。

 あれが楼門かな?

 もっと大変だと覚悟していたのに、意外にあっけなく楼門の柱が、鮮やかな緑の中に垣間見えました。
きっと、あちこち立ち止まってばかりだったからですね。

 一気に上っていたら、きっとバテてた...

 神護寺の石段は、都会のコンクリートの階段には絶対に無い「温かみ」と「優しさ」がありました。

 長い歴史の中で、色々な思いを抱えた人々が、じっと踏みしめてきたから。
石段のデコボコに足を沿わせると、そんなことが感じられてくるのでした。

 静かな立ち姿を見せる薬師如来の慈悲深い面、そして、歴史を感じさせる日光月光菩薩像...

 悲しみや苦しみを背負い、その罪深さを恐れた幾多の人々が、救いを求めてここまでやってきたのだろうか、と、遥かな時代へ思いを馳せつつ、外に出れば、もみじの紅色が私の目に飛び込んできます。

 本格的な紅葉のシーズンには、ちょっと早かった私の京都への旅...

 でも、緑の中に混じる紅は、返って私の目を惹きつけ、心を新鮮にさせてくれました。

 あと3週間もすれば、この神護寺から見下ろす景色は、紅葉で覆われているのでしょうか? そんなシーンを想像しながら、暫くじっと見下ろしていました。

 久しぶりの小さな旅は、ちょっと停滞していた私の頭と心を、すっかりやわらかくしてくれたようでした。

2002.10.30

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